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ALWAYS 三丁目の夕日


 昭和33年の東京下町を舞台に、人々の暮らしや人情が豊かに絡みあう様子が温かく描かれていました。笑いあり涙ありの展開、戦争の影を引きずる者もいるなか、寂しさや苦労だってそれがエネルギーになって、これからきっと良くなっていくと、明るい未来を誰もが信じているような空気を感じました。町の小さな自動車工場の世界進出だって、いつか買ってくれる指輪だって信じられるんです。・・・けど実際は、どうしようもない不幸も存在していた。。。

 見覚えのある物や景色がいっぱい。UKIUKIのいちばん古い記憶ではテレビはもう家にありましたから、 それよりちょっとだけ前の物語。ゴムを巻いて飛ばす飛行機、木だけで組み立てる本箱はいままだ実家にありますし、駄菓子屋のようす、水鉄砲もテレビの上のアンテナも・・・それぞれのシーンでこんなの知らないな〜っていうのもありますが隅々にある物にこれあったよっていうの見つけたり、また障子の張り替えっていうのも子どもには楽しかったとか・・・。町並みや人情は、東京の下町という土地柄があると思いますから、UKIUKIの住んでいた町とは違っていたような気がします。でも、住み込みで働くとか、縁もゆかりもない子をというのは珍しいかもしれないけどよその子の面倒をみるっていうのは、けっこうありました。そう、この物語は他人なのに家族になっていく人情に、温かい涙があふれる作品でした。

 小さな自動車修理工場を営む鈴木則文(堤真一)は、将来もっと大きくしていけるし世界も夢ではないと思って、妻トモエ(薬師丸ひろ子)や子どもと共にいきいきと暮らしています。そんな鈴木オートに、集団就職で上京した星野六子(堀北真希)がやってきます。しかし彼女は、思い描いていたイメージとの違いに落ち込みます。この作品観て、堀北真希はいいな〜若い女優さんの中でも彼女注目って思いました。最近よくドラマや他の映画の予告やらで見かけていましたが、見る度に違う感じですものね。そしてお向かいの駄菓子屋をやっている茶川竜之介(吉岡秀隆)は、雑誌に連載を出している小説家ではありますが、賞をとって世に出るのを夢見てあちこちに投稿しているも落選を繰り返しているのでした。彼は好意をもっている一杯飲み屋の女将石崎ヒロミ(小雪)に頼まれて、母親に置き去りにされた少年淳之介(須賀健太)の世話をすることになります。町の人が頼りにしているお医者さん宅間史郎(三浦友和)の哀愁漂う様子が胸に浸みました。彼の寂しさも淳之介の辛さもヒロミの悲しい人生もまた、そして六子の思いの若い感情も、活気あるその時代や町のなかで確かに共存していたんですね。

 ところでこの作品、「山崎貴監督が得意のVFX技術を駆使し、当時の街並み・風俗をリアルに再現」というのもかなり見所とアピールされていましたので、そういう作り込まれた映像を楽しませてもらいました。
 さらに物語についても、涙あふれつつもかなり作り込まれた感じのするものでした。これだけ”リアル”を意識してしまうとかえって、ついリアルでないことが気になってしまうっていうのもあります。小説書きかけては上手く書けなくて竜之介や淳之介が紙を丸めてポイっていうの、あれすごく違和感がありました。よく見かけるようなシーンですけどね。あの時代にどうかな〜、今でもあんなふうにはあまりしないと思うけど、紙がもったいないよ。UKIUKIの父もあの時代に賞狙いではなかったと思うけどああいう(俳句の)雑誌に投稿している人だったそうですが、上手く書けなくても塗りつぶしたり推敲したり紙にびっしりというのを見たことがあります。自分が子どもの頃を思い出しても普段の遊びは広告の裏とか使ってたし、あんないい紙を無造作に丸めることはないような気がするな〜。また、サンタが来ないのは普通だったと思うけどな。来ないとかわいそう、普通は来るって感じだったのかなあ、東京では。そして路上で「じゅんのすけー!」って、あんなふうに叫ばないよ、とかいろいろ・・・。もちろん全ての作品が作り込まれているわけだけど、そんなの忘れて観ていることがよくあるなか、とにかくけっこう作り込まれた感のある出来過ぎな展開。 まっ、映画だからいいんですけどね。(文句を言っているのではありません、念のため。)すごくよかったけど、後に余韻が残る感じではなかったです。こういう作品も、観終わった後の気持ちが楽なのでいいですね。