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ザ・インタープリター


 アフリカのマトボ共和国、いきなり無残な映像と、さらに少年たちが男二人に銃を乱射する。彼らが誰だったのかは後で分かるのですが、とにかく嫌〜なシーンで始まって、あっ選択を間違えたかなと思ったのですが、その後は国連を舞台にマトボのエドモンド・ズワーニ大統領暗殺計画をめぐってのサスペンスでした。あのシーンは、これから始まる物語の根っこにある生々しい部分を垣間見ておいたってことです。

 ズワーニ大統領には大量虐殺容疑がかけられていますが、本人は対テロ対策と主張していて国連での演説が計画されています。ところがマトボのクー語国連通訳(ザ・インタープリター)シルヴィア・ブルーム(ニコール・キッドマン)がたまたま耳にしたのは、ズワーニ大統領暗殺をにおわすヒソヒソ声。当局に通報した彼女の元に送り込まれたシークレット・サービスのトビン・ケラー(ショーン・ペン)は、彼女が何かしら秘密を持ち嘘をついているのではないかと疑うのでした。

 これは近年の国際情勢や何の非もない人が見ず知らずの人に殺されるのが他人事には思えないこの頃、かなり現実感をもって観てしまう作品でした。銃を捨て言葉の力を信じるという彼女の意思は本物か! 世界中の人がその意思を持てば戦争なんてなくなるけど、言葉で折り合いをつけられない現実。。。また特に、クー族が信じるという話が重いです。それは、誰かが殺されたとき、喪が明ける1年後に”溺れる者の裁き”という儀式で、遺族が犯人を生かすか殺すか決めるというもの、”生命を救えば悲しみに勝てる”というものです。”悲しみの安易な産物が復讐”と言葉では分かっても、もし自分や家族の身にふりかかったらと考えると複雑です。とにかくエンターテイメントなサスペンス・ドラマではありますが、心に問いかけられてるって感じの作品でした。