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交渉人 真下正義


 「踊る大捜査線」シリーズの真下正義(ユースケ・サンタマリア)が主人公、こういうのスピンオフ・ムービーっていうんですね。映画版第2作“台場連続殺人事件”で警視庁初のネゴシエイター(交渉人)として登場した真下正義はUKIUKIのお気に入りでしたから、この映画には期待しまくってワクワクで観に行きました。地下鉄の最新鋭実験車両''クモE4-600''を乗っ取って遠隔操作で暴走させ、地下鉄網全体を混乱に陥れ、乗降客200万人の命を危険にさらす犯人と交渉課準備室課長・真下正義との緊迫した駆け引きが繰り広げられます。

 もう思いっきり楽しみました。このシリーズはエンターテイメントに徹しているっていうのが気持ちよいです。事件の展開が面白く、姿なき犯人は誰?その目的は?しかし目の前の危険をまず回避しなければならないという緊張の連続で、カメラが動いて動いてこれって時に静止はするけどたいていは動いて、躍動感を増しています。ユーモアは前より少なめでUKIUKIには程よい感じだったし、緊迫感があって面白かったです。
 でも何がいいってやっぱり真下正義のキャラクターが大好きです。交渉人としての自信をもった緻密な計算の上に立った話し方や態度にはドキドキしちゃいます。けっしてキザではなく、その表情がプロフェッショナルになっているのがクールです。やわらかい語り口だけどじわりじわりと犯人に迫っていって、時には怒鳴ってみせたりも彼にはめずらしい瞬間です。そしてそのカッコよさと彼本来の人柄とのギャップがたまらないのです。と言ってもこの作品、彼一人がヒーローになって事件を解決するわけではなくチームとして描いているし、ほとんどが地下鉄の司令室TTR(東京トランスポーテーション・レールウェイ)内のシーンで派手なアクションがあるわけでもない、そこで犯人との交渉と同時に地下鉄マンらとのやり取りも見所で、TTR内外のキャラクターそれぞれに味わいがあるっていうのがこのシリーズ流です。
 一方クモ暴走現場ではその迫力と混乱のパニック映像が楽しめます。ほんの数シーンJR西の事故がふと頭をよぎって複雑でしたが、作品ではあれだけの爆発と車両の接触で乗客にパニックやけが人はあったようだけど結果的には大惨事には至らず、あまりに惨いシーンや人が傷つくシーンはほとんどなかったような気がするし、ラストだって犯人は脱出していたのかもしれないと思ってしまうほどで、気持ちよく楽しめました。
 そしてラストはもう気が抜けちゃうほど不甲斐ない真下なんだから・・・、ミーハーなUKIUKIは雪乃(水野美紀)救出から犯人逮捕へと取ってつけたようなカッコよさを見たかった、でもそれって''違うんじゃない!''てことなんでしょうけど・・・、なんて思いながらエンディングロール眺めてたら、ん〜なかなか〜良かったねって思わせてくれてほのぼの感ある締めくくりでした。

 それはそうと、観終わって思い出すと気になることはあるのです。。。
 あれだけの事件を起こした犯人の目的については徐々に明かされていきましたが、あれだけの展開の後真下と犯人の対決がないどころか、犯人の正体について全く答えが無し、犯人の声紋と一致した人物は死亡していたのにどうしてこんなことができたのかという説明もない、あんまりです!
 また真下と犯人の人格が似通っているかのように一線を越えた越えない・・・なんて、そんなふうには思えないんだけどなあ。なんかTVシリーズでは盗聴や不正アクセスに手を出したりするオタク的な面があったようなことチラッと読んだけど、コメディ請け負い人でもあったみたいで孤独な犯人像とは重ならない。これはまた真下正義の過去をビデオでチェックしたくなってきました。犯人はちょっとしたきっかけで一線を越えてしまったのか、何らかの想いが膨らみすぎて越えてしまったのか、どちらにしても一線を越えない者との違いはちょっとではないと思うのです。犯人の本心に触れることができたのでしょうか。共感しあえるところがあるものでしょうか。真下の涙は何だったんだろう?よく分かりませんでした。

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 「踊る大捜査線」映画版やスペシャルは観たなーって覚えてるけど、TVシリーズは何回か観たけどあんまり覚えてないな〜と思って、早速全話チェックしました。
 あららけっこう観たことあるな。でもほとんど忘れてたのは便乗鑑賞だったのかな。基本的に刑事モノはシリアスなのが好みなのでちょっとふざけ過ぎ(特に管理職3人)って感じで、なんとなく観てただけのような気がします。でも改めて今観ると、面白いしすごくいいよー!胸がキューンとしたり目頭が熱くなったりもいっぱいしちゃいます。作品を通してのリンク言葉やリンクネタもいろいろあって楽しめます。そして真下正義クンは、まだまだ頼りなくてナサケナ〜イ感じです。でも警部に合格したあたりから上にちょっと反抗してみたりもして変わってきた感じかなあ。キャリア組でも嫌味な感じはなくって、人が良さそうで面白いキャラクターなのでホッとします。完ぺきに脇役でこのキャラなので、彼がどんな事していたとかほとんど記憶に残っていなかったんですけどね。
 それなのに、彼らしさを残しつつも“台場連続殺人事件”でワォ!と注目させられたし、本作でここまで進化するとは、すっごく嬉しいです。