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コラテラル


 12年間ロサンゼルスでタクシーの運転手を勤めるマックス(ジェイミー・フォックス)は、独立する夢をあたためながらも具体的な行動を起こす勇気はなく、今やプロフェッショナルな域に達した誠実なドライバーとして平凡に生活しています。ある日、彼が乗せたのはビジネスマン風の紳士ヴィンセント(トム・クルーズ)・・・。

 トム・クルーズが''悪役''という前知識だけで観始めたこの作品、確かに今までとは違うトムを堪能させてもらいました。トムが情のかけらも見せずに人を殺すプロの殺し屋を演じていましたが、汚れ役という感じではなく、どこか上品さが漂っていました。縁もゆかりもない人物を依頼どおりに確実に殺すことが彼にとって重要なことで、その無感情な仕事のキレがすごく作品を引き締めていると思いました。でもその仕事以外の部分、マックスとのやり取りに垣間見られる人間的な部分は粗暴ではなく、それがまた違和感なくヴィンセントのキャラになっているのでした。

 ところで、前半の展開があまりにゆっくり丁寧すぎたような気がします。ストーリー展開そのものは普通って感じで、後半やっと緊張感が出てきて楽しめました。それというのも、偶然ヴィンセントの殺しに付き合わされることになってしまったマックスが、はじめは怖じ気づいて言いなりになって連れ回されているのだけど、途中から度胸が出てきてやがて前向きに事件を解決しようとするのです。トムが見どころこの作品でしたが、ジェイミー・フォックスも現実感の滲み出る味があって見応えありました。ラストはちょっと呆気なかったかな〜。