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シモーヌ


 2度もアカデミー賞にノミネートされたのに、その後は大コケ作品ばかり撮り続けている映画監督ヴィクター・タランスキー(アル・パチーノ)は、生き残りをかけた作品『サンライズ・サンセット』が大当たり。人々は主演の新人女優シモーヌ(レイチェル・ロバーツ)の美しさの虜になりました。ところが彼女には秘密があって、マスコミや制作スタッフ、共演者の前にさえ姿を現さないのでした。そして次の『永遠の彼方』でも世間の人気や称賛はシモーヌだけに向けられ、作品自体や彼女を育て上げたヴィクターは注目されないのでした。
 PCが苦手な芸術家ヴィクターが、ソフトを使いこなすだけでなく9ヶ月で映画1本一人で作ってしまうなんて・・・、それは無理があるんじゃない!とか、どうしてそうなるの!といったところもけっこうあって、なんとも都合良く話が進んでいくのですが、UKIUKIとしては、それもこれもまあいいや!とじゅうぶん楽しんでしまいました。

 『ガタカ』(監督・脚本),『トゥルーマン・ショー』(脚本・製作)のアンドリュー・ニコルが監督・脚本・製作というこの『シモーヌ』、どの作品にもちょっと無理っぽいところがあるものの、UKIUKIとしてはむしろ、将来もしかしたら現実としてやってきそうな世界が覗けるようで嬉しいのですが、なかでも本作はほとんど現実的な世界です。それだけにすぐそこにシモーヌが登場したとして、彼女の秘密を守り続けることなんてできるのか?なんて思ってしまいます。

 アル・パチーノ面白い。ヴィクターはいい作品を撮りたいという情熱が一杯で彼はずっと大まじめなんだけど、シモーヌに対する世間の反応は思い込みが思い込みを呼びシモーヌへの愛が沸騰していく様子は滑稽です。ヴィクターがシモーヌの秘密を告白するタイミングを逃して、彼女の人気に引きずられていき、やがて彼女に嫉妬すら感じるようになって、彼女の評判を落とす作戦に出る様子は、コミカルな中に悲哀さえ滲み出ています。
 もはやシモーヌの人気を止めることも、真実を証明することもできなくなって、物語は元妻エレイン(キャサリン・キーナー)や娘レイニーとの関係を絡めて展開していくのですが、ラストはちょっと物足りなかったな〜。まっいっかー!

 あ〜、でもひとつだけUKIUKIにとって本気で残念なのは、シモーヌ主演作それぞれのラストシーンだけがちょこっとだけ出てくるのですが、その1,2作目世界中の人が夢中になるほどかなぁって、それほど素敵に見えないところです。でもインタビューやライブやトークショーなどのシモーヌはとっても素敵でした。