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フォーン・ブース


 NYタイムズスクエアを携帯電話片手に助手を従え駆け引きとハッタリでクライアントとの商談をまとめつつ練り歩くスチュアート・シェパード(スチュ)(コリン・ファレル)は、自称一流のパブリシスト。ひと息ついたスチュはいつものフォーン・ブースに入って、結婚指輪を外して新進女優パメラ(ケイティ・ホームズ)に電話をかけるのでした。しかしこちらの話は仕事のようには上手く運ばず、しぶしぶ切ったその公衆電話のベルが鳴りだします。

 周りの人間をコントロールして自信満々に生きているスチュが、フォーン・ブースにかかってきた電話を思わずとって、やがて『電話を切れば殺す!』とだんだんコントロールされていく恐怖を味わいます。初めの段階でいくらでも話を切り上げられたのに、言いなりになっていく過程がどんなものかと、ちょっと都合がよいというかモタモタした感じがしました。またフォーン・ブースという限られた一点だけで進行するというところが宣伝されていたこの作品、飽きてくるかなぁという心配も少しあったのですがそれは見事に打ち消されました。レイミー警部(フォレスト・ウィトカー)がスチュの置かれている状況に気づいていく展開にもうちょっと工夫がほしいなって感じや、スチュはもともと嫌みな男だと思うんだけど、でもちょっと善人っぽいところもあるのは嬉しいんだけど、それでも彼の妻ケリー(ラダ・ミッチェル)との関係があまりに揺るぎない感じなのができすぎな感じはします。でも何と言ってもスチュが身につけていた傲慢さを脱ぎ捨てていく過程が見どころで、やがてうわべで電話の相手の言いなりになるだけでなく、自分の内面に向き合っていくその姿に引き込まれていきました。コリン・ファレル凄いです。
 そしてこういう作品は、ラストが勝負!そういう意味では良かった! というか、・・・あのようなオチは今や普通ですね。(Coment2004.5.24)

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 リピートしました。というのも、前はスチュや画面に見えてる状況に注目して観ていましたが、「24」シリーズ3まで観てきてジャック・バウアー役のキーファー・サザーランドがこの「フォーン・ブース」でスチュを電話の向こうで脅している”声”をやっていたと知ったからなんです。なので今度はその”声”に注目してみましたとも。。。
   ジャックも声に人を動かす力があると思っていましたが、この謎の男もまた怪しげな口調ではあるものの硬軟自在に使い分けてスチュを自分のペースに乗せていき、逆上したかのように怒鳴っても実は冷静で、人の気持ちをも思うようにコントロールしていくという”声力”に溢れてます。憎い役ですが、最後にチラッと見せた姿はジャックのイメージからは程遠いどこにでもいる平凡な男風で、逆に気味悪い感をラストに滲み出していました。
 別の状況でキーファーに語りかけられたら、あるときは頼りがいのある安心感を、あるときは誠実な力強さを、またあるときはセクシーな優しさに包まれそうな素敵な声です。そして確かな演技力と共に、悪役でも善人でも複雑な人でも、カッコ良い人でも情けない人でも、何でもこなせそうな俳優だと思えてきました。(Coment2005.7.8)