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半落ち


 「半落ち」とは、容疑者が容疑を一部自供しながらも完全には自供していない状態をいう警察用語だそうです。
 元捜査一課の敏腕刑事で現在は警察学校で後進の指導にあたる警部 梶聡一郎(寺尾聰)が、「3日前自宅で妻の首を絞めて殺害しました」と自首してきた。彼は殺害の事実は自供したものの、自首するまでの2日間何をしていたかについてはけっして話そうとしないのだった。

 観ていてもやもや〜と気になるのは、本当に死にたかったら自分で死ぬんじゃないかなぁということと、一方愛しているからこそ望むように・・・というのは気持ちとしては理解できるけどやはり踏みとどまるべきなのに、ということです。
 でもこの作品では、それは判決結果が厳しいものとなっていてはっきり示されていると思うのですが、アルツハイマーが進行した妻への嘱託殺人への同情や理解を求めるのではなく、その事件の奥にある愛や生や死や生きる支えといったものを描いているということがだんだん分かってきて、心に染みる作品になっていました。
 そして彼らの周りに以前からいた人たちや、この事件ではじめて彼らと関わった人たち、それぞれの持つ人間性や心の痛みまたは思いやりといったものが描かれているのがすごく良かったです。たとえば、それがこの事件に対する世間からの風当たりを弱めるようにと動いた警察関係者でさえそれぞれの思いがあるし、報道関係者、検事、弁護士、裁判官、そしてもちろん被害者の姉・・・、それぞれの立場に感情移入してしまいました。