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至福のとき


 チャン・イーモウ監督の経歴はとても豊かで素晴らしいものです。UKIUKIとしては「初恋のきた道」だけしか知らないのですが、それはもうとってもいい雰囲気の作品でした。それでこの「至福のとき」はどうかな〜と、タイトル以外本当に何も内容を知らずに観始めました。

 なんと結婚したくてたまらないホラ吹き男チャオ(チャオ・ベンジャン)のコメディータッチのお話が始まりました。彼が求婚していた女は、前夫の連れ子で盲目の少女ウー・イン(ドン・ジエ)をうっとうしく思っています。彼女の就職の世話を押しつけられたチャオと彼の仲間も実は失業中。でも彼女をほおっておけなくなった彼らは・・・。
 中国社会の厳しい現実の中で生きる彼らに、どうしてあんな心の余裕が生まれるのか現実的な生活感のない作品だわと思いつつも、優しさにあふれた夢のような一時の幸せな気分を味わわせてくれる作品でした。またウー・インが目は見えなくても彼らのウソと本当の心を見抜いていたのも素敵でした。なかでも紙を切ってお金だと渡されたのを、手触りと臭いで確かめてニコッ♪っとするシーンが大好きです。

 これは喜劇なのか悲劇なのか、ブラックユーモアとは考えすぎで素直に優しさに浸っていたいな〜って思っていたら、ラストの展開が突然でやや尻切れトンボの感。そんな・・・彼女一人で危険がいっぱい、いったいどうやって生きていくのかと、余韻に浸るよりそちらの方が心配になってしまいました。
 お互いの優しさがつくった''至福のとき''がもう限界になったとき、それは''思い出''になるだけで、彼らの現実に次へのステップはなかったのでしょうか。。。