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青の炎


 正統なアイドル映画をめざしたという作品。主人公 櫛森秀一(二宮和也)は母(秋吉久美子)と妹 遥香(鈴木杏)親子3人で平和に暮らしていた。そこへ10年前母が再婚してすぐに離婚した男 曾根(山本寛斎)が突然やってきて居座ってしまう。
 17歳の殺人と言えば、今時ありがちな異常な人格とか思春期の屈折した感情のはけ口とか衝動的に といったのかと思えばそうではなく、意外にも古典的なストーリーでした。家族を守ろうと考え抜いて実行した義父殺し、ガールフレンドの福原紀子(松浦亜弥)が微かに疑問を感じたものの、それは完全犯罪になるかと思われたが・・・。

 仲良く暮らす仲のいい家族や友達もいっぱいいるのに、秀一はこの我慢ならない問題と孤独に闘うことになっていきました。どうしてこんなことになってしまったのか。人を殺すことは悪いことだし途中で踏みとどまれないのはどこかおかしいのだけど、衝動的にというのではないだけに、弁護士にまで相談に行って家族も知っているし、時間をかけて考えての実行、むしろなぜ周りが何もしなかったのか止められなかったのかという想いでいっぱいにさせられます。完全犯罪が崩れていき、最後には愛する家族に迷惑をかけたくないと思う秀一は、当たり前の感情を持つ若者なのに・・・と、ホッとする気持ちと苦しい気分が残りました。

 実は家族に便乗で観たのですが、この作品そして二宮和也の演技は期待以上に良かったです。邦画でこのように若い世代の出演する作品は、無理をしているような、個性を見せつけようとするような、またシーンごとの間が不自然だと感じてしまうことがよくあって、あまり好きになれないことが多いのですが、これは殺人そのものは異常だけど、友達同士や家族の団らんの様子など自然だし、何より二宮和也はセリフの言い方とか癖がなく、変に個性を出そうとせず力まずアクのない自然な演技で、それでいて表情が繊細で豊かで好演していたと思いました。