Comment page 2008.9.19 renewal


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つみきのいえ
LA MAISON EN PETITS CUBES   (2008)


 この作品は、たまたまアカデミー賞(第81回)で短編アニ映画賞を受賞するのをテレビで観ていて、どんなのかな〜ってちょっと気になり いつか観られたらいいな〜と思っていた作品です。っで、BSオンエアを発見!
 おぉ〜おなじみのROBOT、こういうのも手がけているのねとちょっと嬉しくなり、静かなBGMと効果音に乗っかって始まりました。12分間の作品です。セリフはありません。

 長年にわたって海面上昇に伴い水没していく街で、つみきを積むように上に向かって建て増しを繰り返しながら暮らしてきたんですね、一人暮らしの老人の様子が淡々と描かれていきます。

 おじいちゃん、寂しそうやな〜 切ないな〜。。。ところが観ていくうちに・・・おじいちゃんが積み上げてきたのは、部屋だけではなかったと気づかされていきます。ある日、水没した下の部屋に落としたお気に入りのパイプを取りに潜ったおじいさんは、つみきのような家を下に下に潜っていきながら、ひとつひとつの部屋で家族と暮らしていた頃の思い出をよみがえらせていきます。それを見ていて、おじいちゃんの孤独を思うと やっぱりとっても寂しいんだけど、それでもなんともいえない温かさが広がってきました。きっと おじいちゃんも、そうだったんじゃないかな〜。
 UKIUKIはよく、大切な人たちの最期を見送るのが幸せなのか見送られるのが幸せなのかって考えるんです。母に見送られて悲しませるのは嫌なので見送りたいと思っているし、子たちを見送る悲しみなんて嫌なので見送られたい。でも夫とか・・・どうなんでしょうね。そんなことをまた心によぎらせながら、観てしまいました。
 最上階の部屋に戻ったおじいちゃんは、初めと同じように 一人ぼっちの食事をするんですけど、今度は下の階から持ち帰った妻のグラスが加わって ふたつのグラスにワインを注ぎました。幸せな思い出に包まれて、妻とともに歩んだ人生と 今の自分に納得!の乾杯〜チン〜ッ☆ なんだと思いました。

 絵の線やら色彩やらの淡い感じや老人の動きとかが、しみじみとした感情をふくらませてくれます。グラスに注がれるワインが ほんとうの液体のように見えるし、水面の波紋やそこに映る影、また泡などでも 透明な水の存在がちゃんとあって、老人が潜っていくシーンはその漂い方がかなりリアルで、ほんとうに水中にいるように見せてくれますし、自分も一緒に水中の目線で見ていました。ナレーション入りのもあるようなのですが、UKIUKIが観たのはサイレント(効果音はあります)で、セリフは全く必要ないって思えたし、どんなナレーションだか?いらないな〜と思いました。とにかく、UKIUKIにとってはこんなの初めて観たな〜ってアニメで、いろんな要素が内容とすごく相性がよくって、心の中に入ってくるのでした。

 蛇足ですが、海面上昇に伴い・・といっても、描こうとしていることに温暖化などは関係ないんだと観て分かりました。でもそういう背景が現実にあることで、この”つみきのような家”の思いもかけなかった すんごい発想が そんなに絵空事ではないような感覚にさせられて、おじいちゃんを身近に感じられたように思います。(Comment2010.2.22)