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トレーニングデイ


 ロス市警麻薬捜査課に配属された新人刑事ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)に、アロンゾ・ハリス(デンゼル・ワシントン)が大物容疑者を狙う麻薬捜査の実態を教え込もうとする一日を追う。

 アロンゾは、悪党につけ込まれれないように、また汚い現実の中で相手の信頼を得るために、規則や法を破って手を汚し手荒い捜査をしています。そんなアロンゾのやり方は悪を倒すためと思いたいけど、次第にその行動はエスカレートしていき、自分の身を守るための犯罪にジェイクを巻き込んでいきます。
 「羊(善良な市民)を守るために狼を捕まえる。狼を倒せるのは狼だけ。だから自ら狼になるんだ。」と言って根っからの狼になった例は、Xファイルfile314『グロテスク』を思い出します。

 アロンゾがジェイクに不法行為の実態を惜しみもなく見せて、目をかけたのはどうしてなのかと考えてしまいます。昔の自分にそっくりの正義感をもっているジェイクに、悪の大物を捕らえるのに現実的だと悟った自分のやり方を、なんとしても教え込もうとしたのか。あるいはコンビを組んだ限りは見方につけようと、強引に仲間に引きずり込もうとしたのでしょうか。
 アロンゾが前半ジェイクに語って聞かせる、麻薬捜査の現場で命を守り悪党に弱みを見せないための''マジな話''は、大物の容疑者を何人も逮捕しているベテランの貫禄があって納得させられます。また麻薬を買った学生やレイプされそうになった女学生に、どんなに危険なところに入ってきたかを言って聞かせるときの表情には、彼の本来持っていた情熱や良心が垣間見られます。そしてロジャーとの友情あふれるくつろいだ雰囲気にはほっとしたのだけど・・・。これらはデンゼル・ワシントンが演じてこその雰囲気だなあと、つくづく思います。
 それなのにやっぱりひどい悪徳刑事なんだ、許せないと自分に言い聞かせていくことになる展開は、ほとんどジェイクの感情と重ねて観ていたような気がします。
 ジェイクは、正義感あふれる使命感の強い青年だけど、アロンゾの不法行為に反発しながらも、彼が大物逮捕の確かな実績をあげ無法地帯の街でも一目置かれているという存在感に惹かれていきます。しかしぎりぎりのところで葛藤し、正義感や良心を失うことなく芯を通していったところが、すごく良かったです。
 デンゼル・ワシントンがとことん悪役でラストを迎えることになって、あのような血生臭いシーンはあまり好みではないけど、中途半端でなくて良かったんだと思いたいです。