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シッピングニュース


 幼い頃から自分を押し殺して生きてきたクオイル(ケビン・スペイシー)は、本気に愛して結婚した妻ペタル(ケイト・ブランシェット)にも裏切られて先立たれてしまった。彼は娘バニーに母の死を告げられないほど、深く落ち込んでいる。叔母アグニス(ジュディ・デンチ)に誘われて、三人は傷ついた心を癒そうと祖先の地ニューファンドランド島に向かう。

 祖先の地で新しい生活を始めようとしたクオイルは、新聞社でコラム ''シッピング(港湾)ニュース'' と ''交通事故'' 担当になる。仕事仲間や若き未亡人ウェイヴィ(ジュリアン・ムーア)と出逢い、みんな何かしら心に傷や重荷を背負っていることがだんだん分かってくる。彼はトラウマや心の傷と向き合うことになった仕事や周りとの人間関係にもしだいに自信をつけていくが、そうしていくうちに彼の祖先 ''海の一族クオイル家'' の謎や秘密がだんだん明かされてくる。

 これまでの人生を隠したり逃げたりしているうちは、トラウマや心の傷が癒されることはない。それと向き合い、目の前の現実を切り開いていくことで、乗り越えられるのだと教えられたような気がします。

 演技派俳優(他にもピート・ポスルスウェイト:編集長タート、スコット・グレン:社長ジャック、リス・エヴァンス:仕事仲間ナットビームなど)をそろえた、そうそうたる出演者たちが、それぞれの味を充分出し合いながらも作品に溶け込んでいる感じで、気持ちよく観ていられました。特にケビン・スペイシーは、作品によっては彼の演技が目立って作品に浸れなかったこともあるのですが、この作品は彼がクオイルそのものに見えました。ジュリアン・ムーアも今まで観た中で一番好きです。