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コレリ大尉のマンドリン


 1940年代のケファロニア島(ギリシャ)では、恐ろしい地震と戦争に、人々の運命が巻き込まれました。
 状況は深刻なのにみんな個人的にはいい人で、ラストはお決まりのハッピーエンドでしたが、登場人物それぞれに味があって、戦争と愛(ラブ・ストーリー)を絡めた映画で私がこれまでに観た中で、ほかにはない雰囲気の作品でした。私の好みでは、「パール・ハーバー」やいくつかの大作よりは好きです。私は、大作でよく長々と見せられる目を覆いたくなるような戦闘シーンより、戦争に巻き込まれてしまった人達の人生を想うだけで、十分心が痛みます。この作品はラブ・ストーリーが主なテーマだと思うけど、それでも最小限(?)の銃撃シーンは悲惨でした。

 ペラギア(医者の卵)とマンドラス(漁師)は恋におち、婚約をしてマンドラスはアルバニアの戦いへ出かけました。純朴な漁師だった彼も戦争に巻き込まれ、どんなに彼女を愛していても戦いに出かけていく、誇りをもって大儀のために生きる人間になりました。ペラギアは、彼に手紙を出し続けましたが返事はなく、心配と失望で、とうとう彼への愛が枯れはててしまいます。

 アントニオ・コレリ大尉(イタリア)が島にやってきます。戦時下でのコレリ大尉やその仲間の歌やダンスには、ペラギアでなくても違和感を感じますが、それがイタリア人気質だというのがだんだんわかってきます。彼は、訓練では凛々しく指揮を執りながらも「人に銃を向けた経験は一度もない。」「歌って何が悪い・・・、人生にはいつも歌がある。」と言い、印象深かったのは「僕は足蹴にされている人々をきょうだいだと思う。それが僕の理念だ。」と言ったところです。そして『ペラギアの歌』をマンドリンで奏で、彼女への気持ちを告白します。だから初めて人に銃を向けて撃つ彼の姿を見るのは辛く、戦争の空しさを感じました。

 ペラギアがアントニオに「あなたはわたしの世界をひっくり返しに来たの?」言い、その後自分の気持ちに正直に生きる彼女は強いと思いました。
 娘を見守るペラギアの父(医者)は素敵でした。彼が語る本物の''愛''が、心にしみ込んできました。こんなお父さんがいてくれたらいいなあ。

 アントニオの『ペラギアの歌』を聞いた時の、マンドラスの母の反応が好きです。彼女も戦いにいく男(息子)を送り出し帰りを待つ女、立場は違うけど、ペラギアの気持ちが理解できるのか怒って騒いだり取り乱したりしないところに、悲しさを感じます。

 ドイツ兵グンターは、ドイツ人は優れていると思ってはいてもアントニオに影響を受けたけど、それ以前に彼自身ドイツ兵のなかにあって、ちょっとはずれた自分をもっていました。でもやはり、彼も国家や軍にのみ込まれていくのでした。

 登場人物に感情移入はできなかったけど、客観的に独特の雰囲気を味わうことのできた作品でした。