97/03/17

 星というにはちょっと小さいけれど「惑星探査機パイオニア10号」が宇宙のかなたを飛び続けている。一九七二年三月に打ち上げられて、ちょうど二十五年。今は地球から百億キロあたりだ▼その名の通り、一年九カ月後に惑星の一つの木星に接近して、木星本体や衛星ガニメデの鮮やかな写真を送ってきた。めい王星の軌道を横切って、太陽系の外側に飛び出してからでも、もう十四年になる▼その間、ずっとデータを送り続けた電池がとうとう今月中に寿命が尽きるという。電波が届かなくなれば永遠にサヨナラである。あとは時速四万五千キロの猛スピードで地球から遠ざかっていくばかりだ▼でもこの「星」には、人間の男と女の絵、地球の位置、打ち上げ時間を刻んだ金属板が積み込んである。ET(地球以外に住む知的生物)探しに熱心だった天文学者の故カール・セーガン氏が「宇宙人へのメッセージに」と考えついた▼「パイオニア10号」がいつの日か文明星に届くのかどうか。二千億もの星がある銀河系の中に、文明星は百個とも一億個とも。その中の一つは数百光年の距離にあるかもしれないという。今後、10号は一番近い恒星までに三万年かかる。数百光年だとざっと計算して一千万年。そのころ地球に人間が存在していれば交信が始まるかな▼と、こんなことを考えていれば春の夢も気宇壮大である。クサクサした気分もほぐれてくる。そういえば「行く星」に代わって「来る星」ヘール・ボップ彗星すいせいが接近中だ。太陽に最接近するのは四月一日だが、それはまた稿を改めて。

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